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東京高等裁判所 昭和29年(ツ)35号 判決 1954年11月20日

上告人 控訴人・被告 古庄伊佐吉

訴訟代理人 金綱正己

被上告人 被控訴人・原告 斎藤いね

訴訟代理人 加藤勝之助

主文

原判決を破毀する。

本件を東京地方裁判所に差戻す。

理由

上告代理人金綱正巳の上告理由は、別紙記載のとおりである。凡そ数人にて一棟の建物を区分し、各その一部を所有することができるのは、その区分せられた部分だけで独立の建物と同一の経済上の効用を全うすることができる場合に限るのであつて、その部分が他の部分と併合しなければ建物としての効用を生ずることができない場合には、一個の所有権のみ存在し、各部分につき区分所有権を認むべきではないのである。この理は或人が他人所有の建物に増築をなした場合においても亦同一であつて、その増築せられた部分と従来のままなる部分とが各独立の建物と同一の経済上の目的に使用し得る場合には各部分につき区分所有権を認むべきであるが、増築部分と旧部分とが相併合しなければ建物としての効用を全うすることができない場合においては、増築せられた部分は旧部分と不可分の一体をなすものであるから、民法第二百四十二条により全部他人の所有に帰し、その増築部分のみにつき増築者の区分所有権を認むべきではないのである。本件につき原判決によれば、原審は上告人(控訴人)が被上告人(被控訴人)所有の九坪の建物に約五坪の増築をなした事実を認定し、この事実のみから被上告人の所有権が民法第二百四十二条により当然に右増築部分のうえに及ぶと判断し、増築部分が右九坪の建物と不可分の一体をなすや否やについての具体的説示をなんらしていないことは論旨後段指摘のとおりである。してみると、原判決は理由をつくさずして民法第二百四十二条を適用した違法あるに帰するものであつて、この点において破毀を免れない。

よつて爾余の論旨に対する判断を省略し、民事訴訟法第四百七条に従い主文のとおり判決する。

(裁判長判事 柳川昌勝 判事 中村匡三 判事 下関忠義)

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